CASE #130 ヴォールトとアーチの住宅
- 設計:
- 荒川 圭史
- インテリア:
- 山ののてデザイン制作株式会社
- 竣工:
- 2021年4月
- カテゴリ:

お施主様は仕事柄、RAUMFREX展示場のヴォールト天井の部材開発にも関わっていただいた経緯から、ご自宅にもヴォールトを取り入れたいと考えておられました。また、中庭が欲しい、吹き抜けをとって明るい空間にしたいというご要望をお持ちでしたので、内と外に作った吹き抜けを一体にした、住宅としてはかなり大きな空間を中心に住宅としての機能をその中に組み込んでいきました。

この敷地の北側には緑豊かな大きな公園があります。公園の緑を借景し、それを心地よさの素にして構成するセオリーに則ってはいますが、この住宅の主題はそこではなく、内部空間に自ら作り出した中庭と吹き抜けがテーマになっています。

玄関で見せるものは窓だけで、その代わり窓枠が光る絵を入れた額縁のような存在になる作り方をしています。ミースはGod is in the detailsという言葉を好んで使っていたという話を聞きますが、よく考えられている部分からは、すがすがしさを感じます。

光の滲み方と広がりが生み出すヴォールト天井の立体感や、場と場のつなぎとしてのアーチには絶対的な魅力があります。

光の滲み方と広がりが生み出すヴォールト天井の立体感や、場と場のつなぎとしてのアーチには絶対的な魅力があります。

余分な装飾を排除した理にかなった曲面や曲線で構成された空間には、直線だけで構成されたモダンなものからは感じられない心地よさがあり、これはロマネスク建築を代表するフランスのル・トロネ修道院にも通じるものです。

ヴォールトとアーチと窓が絡む部分の納まりにはかなり気をつかっています。東側に連続するロング窓はメカが見えないように壁を下げてロールスクリーンを仕込んであります。

アーチが窓にかかる部分はアーチを半分にしています。あくまでも窓の割り付けが優先です。

床はヘリンボーンの床材を使い奥行が強調されるような方向に貼ってあります。

床はヘリンボーンの床材を使い奥行が強調されるような方向に貼ってあります。

ジャスパーモリソンがデザインしたGLOBALLは光が入った時には器具表面の輝度の差がほぼなく、まるで立体ではなく平面のようで、空間の中にぽっかり穴が開いたように見える不思議な照明器具です。

全方位に発光する照明器具は多々ありますが、器具単体にこれだけ引き込まれる魅力を持ったものは他にはない気がします。たくさんのGLOBALLは大きさ・取付方が異なるものを3種類織り交ぜて使っていますが、位置、種類、高さはスケッチと3DCADで検討して決めています。

穴の中には光を入れて明るくするというのが照明デザイナーのセオリーだという話を聞いたことがありますが、階段室の中には小さなGLOBALLを入れてあります。サヴァンナ効果というようです。

穴の中には光を入れて明るくするというのが照明デザイナーのセオリーだという話を聞いたことがありますが、階段室の中には小さなGLOBALLを入れてあります。サヴァンナ効果というようです。

植物は居心地のよさを生み出す大きな要素です。中庭の大きなイロハモミジがこの住宅全体に潤いを生み出す素になっています。

建具も作りこんで難しいことをしています。脱衣所と洗面所は仕切りたいけれど、真ん中に建具の戸当たりを設けると引違い窓が分断されてしまうので、引戸の小口をL型に曲げた上に切り欠いて、窓の障子の召し合わせ部に納まるようにしています。














