デザイナーからの最新情報

TOKYO　DESIGN　OFFICEの荒川です

 

17日（金）TOTOデザイン　ショウケースで行われているセミナーに行ってきました。

建築家がつくる住宅水まわりというテーマで行われているもので、今回で８回目になります。

場所柄少人数で行われるセミナーであまり情報もオープンになっていませんが、講演後に

ビールを飲みながらの懇親会もあり、直接話ができるのでネットや本ではわからない

ニュアンスがわかるので、毎回楽しみにしています。

今回の建築家は駒田剛司・駒田由香さん。由香さんはもともとTOTOでシステムキッチンや

サティス(TOTOのワンピース便器）のデザインをされていたということです。

そういうことでしたか。

駒田さん夫妻、名前は覚えていましたが、正直どんなことを考えて、どんなものを作っている

のまでは、理解していませんでした。

しょっぱなから平井の家とかICHINOEというタイトルのリノベーション。私はもともと江戸川区

の葛西と一之江の中間あたりにある江戸川という場所で生まれ育ち、高校は平井にある

都立の小松川高校の出身なので、妙に親近感があったのですが、なぜ江戸川区？

駒田さんの事務所は西葛西にあり、HPでも江戸川区で活動していることを強調されていま

した。                                                                                         　　　　　納得。

建築はプランを見ているだけではそれがいいのかどうか、なかなか理解できないことが多

いのですが、駒田さん達の作る住宅は特に図面と写真がなかなかリンクせず、写真を見せ

られるたびに｢ヘェー｣と声が出てしまうような状態でした。

実物を見るとまた印象がかわるのですが、今回見せていただいたものもどれも面白く、機会

があれば、ぜひ見せていただきたいと思いました。

講演の中で、気持ち良さとか、楽しさというような感覚がキーワードになっているように感じた

ので、質問シートにそういうところから計画をスタートするのですか？という内容のことを書い

たのですが、案内約の中谷正人さんが取り上げてくれました。

駒田さんもやはり気持ち良さというようなものが、住宅を作るベースになっているようです。

それが面白さにつながっているような印象を受けました。

駒田さんの表現だと｢居場所を作りたい。なるべく機能は考えない。｣という表現をされてい

ましたが、この話は私もまったく同感です。

後で中谷さんが、駒田さんはもともと香山壽夫先生のところにいていて、香山先生は、

機能を取り払ったときに何が残るのかということを、昔から大切にされていたという説明を

してくださいました。浜田山モデルを計画しているときに、ルイスカーンの住宅を結構意識

していましたが、香山先生はカーンのもとで仕事をされているので、駒田さんの住宅にも

そんな感覚が脈々とつながっているのかと思いました。

駒田さん達の住宅は一見ミニマルで、とてもスタイリッシュな印象を受けますが、そういう

ことよりもっと根底にある居心地良さのようなものは、写真と話だけからも十分伝わってき

ました。

創刊1000号の新建築の座談会で藤本壮介さんも以下のような発言をしています。

「僕は何をベースに建築を作るかと言うと「快適かどうか」なんです.外側から理論的に

攻めるよりは、「こういう場所って楽しいと思いませんか？」と言えるような空間からスタート

します。

菊竹清訓さんやその流れを汲む内藤廣さんも50年たって機能が意味を持たなくなった時、

何が残っているかが大切だというような発言をされていた気がします。

われわれも　SETA　modelを計画したころから、無条件な気持ちよさを持っていることが

ロングライフにつながるという考え方でへーベルハウスの設計をしています。

今回駒田さんのお話を聞いて勇気が出ました。

懇親会の最後に、明らかに岩井君のものだとわかる質問で、夫婦二人で一緒にデザイン

していることにたいするものが紹介されましたが、やはり二人で納得がいかないようなもの

では、お客様に納得してもらえないというような話をされていました。手塚さんのときも同じ

ような質問をしていましたが。ほぼ同じような答えが返ってきました。

日ごろからチームデザインの大切さを訴えている岩井君、期待通りの答えに満足気でした。

当日の様子は駒田さんのブログでも紹介されています。