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ホキ美術館

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牧野貞幸

東京デザインオフィスの牧野です。

 

この休日に千葉のホキ美術館へ行ってきました。

 

昨年の11月にオープンした、写実絵画専門の美術館です。

写実絵画に特化した美術館であるという特異性だけでなく、

日建設計による、その建物も、設計段階から話題を呼んで

いました。

 

   今年のはじめにBSのテレビ番組で、この美術館の特集を

やっていて、それを、たまたま見て以来、はじめて見た写実絵画

にも、とても惹かれ、機会があれば、是非行ってみたいと思っていました。

 

東京から車で約2時間、あすみが丘という比較的新しい住宅地と、

緑豊かな「昭和の森」との境。

高低差のある、とても細長い敷地に、それは、建っていました。

 

駐車場側から最初に見えるこの建物は、あまり高さもなく、

思ったより小さな印象です。

 

駐車場側.JPG

 

住宅地と反対側にあるアプローチを進んでいくと、エントランスがあり、

その先に降りていく階段が続いています。

そこまでくると、この建物の印象は一変。

 

  30mはあろうかという、キャンティ状の「筒」が目に飛び込んできます。

このダイナミックな構造体がこの建物の印象を決定的なものにします。

 

 

自然光.JPG

 

さらに、進んで、敷地の一番低い側から見上げた、この建物の印象は、

形状のパターンこそ同じですが、駐車場側のそれとは、大きく異なって、

見る者を圧倒します。

 

キャンティ.JPG

 

ただ、決して、おかれた環境に反発するのではなく、大きなからだを半分地下に埋め、

静かに横たわって、環境に溶け込もうとしている印象です。

 

 

境界.JPG

 

建物の周りをぐるっと一周してから再びエントランスへ。

美術館に併設された、レストランも予約が取れないほどの人気ぶりで、

連休明けの、雨の平日にもかかわらず、多くの人で賑わっていました。

 

 

入り口.JPG 

  中へ入ると、エッジの効いたダイナミックな外観とは対照的に、とてもやさしい雰囲気。

白いペイントの壁と天井。ゴム系のチップを使った床、そして、自然光を入れる、

継ぎ目のないFIXガラス・・・・・・。

言葉で書くと無機質な感じですが、実際は

やわらかい曲面の壁、天空にちりばめられた星のようなライト、そして、なにより

ちょうどよいスケールの空間が、体をつつみこんでくれるような感覚です。

 

  内部の撮影はNGなので、ポストカードの写真ですが、雰囲気は伝わると思います。  

                                      

ホキ.JPG  細かいところまで、とても丁寧に設計されていて、一言で言うと、非常に

      "仕舞" のキレイな建物    という印象です。

照明や空調をはじめ、消防法等で必要な設備も、ノイズにならないように

とても気を使ってかくされています。

 

この写真だとわかりませんが、絵を掛けるためのピクチャーレールもかくされ

作品だけに集中できるよう配慮されています。

 

  FIXのガラスの下端は、床より一段下がっていて、普通に歩いていると

床が宙に浮いている感覚で、視覚的にも外部との境界を曖昧にすることで

この空間の柔らかさを演出しているように思います。

 

 

hoki.JPG

 

  見た目の美しさだけでなく、機能への配慮も実に細かくなされています。

 

展示するものが写実絵画に限られていて、しかも、所蔵している絵画のために

設計されたという特徴にもよるのでしょうが、実に、絶妙なスケールの空間です。

 

  絵画の見やすさは、今まで見たどの美術館より、ストレスのないものでした。

 

天井に埋め込まれた、星空のようなLEDの照明も、作品ごとに、調整が出来る

ようになっていて、その作品を、もっとも美しくみせるために、実に効果的に配灯

されています。

 

  通常、美術館では、敬遠される、自然光のとり込み方も、作品の鑑賞に

影響を与えないよう、マドの位置が計算されていて、マドを切ることによって

得られる、圧迫感をなくす、という、メリットだけが享受されています。

 

  また、床材の選定にもとても配慮が感じられます。

総延長500mにも及ぶ回遊式の館内のほとんどすべてに、ゴム系のチップの

床材が使われています。陸上競技上のトラックで使うアンツーカーのように

弾力があり、ほとんど疲れませんでした。

室内で使っている例はあまり記憶にありませんが、

疲れないだけでなく、滑らないし、気になる歩行音もないので、

こういう場所には、とて適しているように思いました。

 

  細かいところは、もっともっとあるのですが、全体的には、実に

 

      "行き届いた建築"

 

 という感じで、最近見た建築の中では、もっとも印象的で、

かつ、勉強になりました。 

 

  せっかくなので、最後に絵のはなしをすこし。

 

写実絵画というものに初めて触れて、   とても驚きました

 

入場者のほとんどの人がそうしていたように、私も絵に顔を近づけて、

じーっと見入ってしまいました。

 

                                                                      石黒賢一郎作 「QH-ED02」

 

ホキ人.JPG                                                          石黒 賢一郎作 「VISTA DE NAJERA」ホキ風景.JPG

 

  絵画は門外漢で、写実絵画の評価は、私には、よくわかりませんが、

この絵のデッサン力や、光や影を見る力の 物凄さ は十分伝わってきます。

私には、これは、神の領域 に感じられました。

                                                               

                                                                                   島村信之作 「日差し」

ホキ人2.JPG

      いくら、目を凝らしてみても、なぜその色を使うと、

そんなふうに見えるのか・・・、全く理解できませんでした。

ただただ、すごいものを見せてもらった・・・   という感想です。

 

  ということで、建築も絵画も、本当にすばらしいものを

見ることができました。

 

とっても幸せな一日でした。

 

 みなさんも、機会があれば、是非行ってみてください。

 

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