東京デザインオフィスの荒川です。
今回もずいぶん間が開いてしまいました。
あたらしいコンセプトの展示場を作るとそれに共感いただいたお客様から同じ考え方で作ってほしい。といわれることはよくあります。
東京一軒家の光通風雨戸「コモド」や光の扱い方を参考にした住宅が完成しました。
全貌は近いうちに紹介しますが、今回は内部に作ったR15の格子の話です
ちょっと不思議な感じがします。なぜこんなものができたのかということを少しお話します。
ここは奥様の書斎コーナーで他の部分から視覚的に少し距離を置いた空間にしたいというような要望が当初からありました。
はじめは単純に縦格子を入れましょうということになっていたのですが、
どうも直線的過ぎるものが肌に合わないということが徐々にはっきりしてきて、
断面が卵型のものをランダムに並べていくというようなアイデアが出ました。
いかにもコストがかかりそうですが。
ただ問題も多くどうやって固定するのか?
そんな棒をどうやって作るのか?
いくらかかるのか、本当に綺麗なのか?
感覚的にランダムに並べるというのは形の根拠が希薄なので
かなりのセンスと自信がないとできないと思っています。
また意味があるのかどうかもはっきりしないままコスト度外視で
なんとなく作ってしまうというのは、バブルのころよくあったと思いますが、
たいてい時間の変化に耐えられずだめになっていきます。
デザインというのはある操作をすることで違う状況を生み出すことだと思っているので、
なんとなくランダムに感覚に頼って並べていくというやり方にはかなり違和感があります。
まずは玉子を円にして円柱の配列を変えていくというようなことをやってみました。
φ80の円柱をはじめ直線で途中から円周に反って並べていくのですが、
見え方に変化を付けたいので、階差数列というのでしょうかピッチを15mm
づつ広げていくというような並べ方をしてみました。
ここでは途中から円周に沿っていくということと、間隔を15mmづつ広げていくという二つの操作をしています。
ただφ80の円柱が実は決して安くなく、さすがに無垢のチークではいくらかかるかわからないので、
付き板を張るという方向で考えたのですが、付き板は一般的には平たい板にはるので、
円柱に貼るというのはそれ自体お金がかかるということがわかりました。
それで素材をアッシュではなくチーク色に着色するというやり方にかえましたが、コストは付き板と似たり寄ったりでした。
マルホンさんにどうしたら安くなるかを相談したのですが、
φ80の円柱は40×80の材料は張り合わせそれを丸く削っているようで、そんなに手間がかかっているとは思っていませんでした。
そこで張り合わせるのはやめにして、40×80をそのまま使えないかと考えました。
そのままだと、お客様が希望しているやさしい感じにはならないのでRに面取りをする方向で検討しました。
相談すると15Rまでいけるということがわかり四隅に15Rをとりチーク色に着色したアッシュ材のサンプルを作ってみました。
これが案外いい感じでした。と同時に劇的にコストが下がりました。
さらに並べ方はもう一ひねりして、階差数列でピッチを広げながら、
面取りした格子を15度づつねじっていくという配列を作ってみました。
天井にも、床にも印籠というのですが、取り付けようの駒を並べて行きます。
こちらは天井
こちらは床面
なんとなく魚が流れに逆らって泳いでいるように見えます。
ここに40×80(15R)の材料をはめ込んで行きます。
間接照明からのひかりに呼応して、やさしげで綺麗な格子ができました。
お客様も大変喜んでおられました。できすぎですね。