東京デザインオフィスの荒川です。
ヘーベルハウスに限らず 、街に普通に立っている鉄骨プレハブ系の建物のプロトタイプはほぼこの形をしています。
キューブにベランダと庇がついただけの形です。
何も考えず、機能的に必要な物をつけるだけだとこうなってしまいます。
見るからにアパートっぽい形です。
何の面白味もない形ですが、今の東京に限らず、街はほぼこの形の建物で埋め尽くされています。
常日頃、この状況はなんとか打破したいと思っていたのですが、数年前に都市計画学会のプレハブ住宅景観研究会というワーキングに参加させてもらっていたことがあります。
ずいぶんといろいろな街を歩いて見て回ったのですが、その時の結論も、
・悪いのは別にプレハブだからというわけでもなく、プレハブに限らず、こういう建ち方をしている建物が多い。
・サイディングの壁が作る、嘘っぽい素材感。
この二点がどうもよくないといよね、という話になっていました。
形態操作というほど大げさな話ではないのですが、そうでない形をどんなふうに作ればいいのかを、世田谷区に計画中の賃貸併用住宅の形を例にして解説します。
成城モデルでも使っている独立袖壁を建物の真ん中あたりに建ててみます。
二層分の壁はそれだけでかなりの存在感があります。
右と左でゾーンもセパレートしています。
これだけで、全く状況が変わってしまいます。袖壁というシステムができたおかげで
ヘーベルハウスの形の可能性はかなり広がりました。
ただこれだけだと右の方からみるとつまらない形になってしまうので、
ベランダとういうかスラブを延ばして回しこみ、翼のような形を作ります。
ずいぶんよくなりました。
どうせならもう少し遊んじゃえ。
ということで上のスラブと下のスラブを繋ぎ一筆書きのようにします。
これでずいぶん面白い形ができました。完成。
かと思った矢先、右に張り出した翼が北側斜線制限に抵触していました。
残念無念。
仕方がないので三階部分を削り取り、奥からくるスラブと縁を切るような形にしてみましたが、
反対側から見ると耳が出っ張っている なんですかマン(古い)か
マギー審司の手品みたいでカッコいいとは言いにくい形になってしまっています。
とりあえず耳を切り落とすと、スラブと袖壁が同じ平面上でT字の形になってしまい、
これはこれで窮屈な感じがしてしまいます。
ならば、スラブを伸ばして、袖壁とスラブの縁を切ってしまえ。
ということで、この形が出来上がります。
スラブと壁による表現というより、
二つのボリュームが貫入しているような形にみえてきます。
できたできた、と思った矢先、
今度はこれでは建築面積がオーバーしてしまい、またまたOUT。
なれば、スラブに穴を開けてしまえという力技で抑え込みやっと完成。
これからこの形で、構造的にOKなのか検討を開始します。
プランは何も違わないのにスタートの形とゴールの形、
ずいぶん違うものになるんですね。