東京デザインオフィスの荒川です。
10月1日に2014年度のグッドデザイン賞の受賞作品が発表されました。おかげさまで今年も受賞することができました。
今年は「街かどへーベルハウス鍋屋横丁」を応募していたのですが、審査の公開コメントによると、
「住宅等が密集して建つ都市部での小さな敷地を前提に、そうした地域ならではの火災危機等を考慮した防災性の確保のためのデザインの提案、また2.5世帯が同居できるプランの工夫等が評価された。」
ということでした。
今回の提案はまさにいろいろいろいろ・・・・・なことを、積み重ね積み重ね、いかに安全で気持ち良く、かつ住みやすく、また生活の変化に対応できるかを、考え尽くし、
このボリュームの中でやれることはもうないのではというくらい、いろいろなことを考え抜いた住宅なので、このような評価をいただいたことは、非常にありがたいことだと思っています。
外観は日本古来の「うだつ」のを意識した袖壁と壁で構成した「FREX GENB」のプロトタイプの外観で、今回のかなり複雑なプログラムをかなり強引に、力技で詰め込んだ形になっており、地震に負けない、地震によって引き起こされる火災にも負けない強さを表現できていると思います。
機能を詰め込んでいる分プロポーションはちょっとズングリしていますが。
この計画の中で、いつも考えている光の見え方や風の感じ方だけでなく、
どういった家族構成でも住めるような家、
狭くても不便を感じず、気もちが良い家。
自然に頼るだけでなく人工環境的にも快適な家。
具体的にいうと、空気清浄器や全熱交換式の空調を取り入れた家。
照明はほぼすべて間接照明で計画し、間接照明は暗いという先入観を払拭すべく、快適な照明環境を作り出した家。
素材の持つ豊かさを引き出した家。
そんな家を作りたいという思いをほぼ出しきったような住宅ができたのではないかと思っています。
一階は母娘二人で住む世帯のLDKとお母さんの寝室、もちろんほかの想定でもいいのですが、その使い方にしては余りに狭く暗い。そこを克服するために、いろいろなことを兼ねる提案を重ね、もう計画手法としては常套句になっていますが、小さな吹き抜けから明かりを取り込み、狭いのに気持ちがいい。そんな空間ができたと思っています。
実はこの家の中で、一番条件が悪いのに一番居心地がいい場所だと思っています。
独身の娘さんの部屋。充実マイルームです。
一人で住む部屋としては、これ以上の機能はいらないというくらい至れり尽くせりな空間を目指したのですが、この部屋も非常に快適な空間として出来上がっています。
いわゆる家具屋さんが作る造作家具と建築工事の境界をなくしたいという思いから施工区分はあいまいになり、おまけに空調設備工事も思い切り絡み、非常に困難な工事になってしまいましたが、三階の空間を支配している大きな棚の塊というかコアが非常に機能的で快適な空間を生み出していると思います。
視点を固定化してしまうということで、嫌われることもあるパースでの表現ですが、自分の中での確認作業として、絶対に必要な工程だと思っています。
それが必要ないほどの天才ではないので。
そういうことで出来上がった三階の主空間は、これも最近ではプランニングの常套句となっていますが、南北に大きな開口を持ち、南の光と北の光の対比がとても気持ち良く、気持ち良い風が抜ける空間に仕上げっています。
今回で五度目の挑戦、二回目以降から4年連続での受賞となりましたが、こういうお祭りに参加することで、少しでも多くの方に気持ちいい、快適なヘーベルハウスを見ていただける機会ができればと考えています。