東京デザインオフィスの荒川です。
荻窪に集合住宅を計画しました。
敷地は荻窪駅の南側、善福寺川に下っていく坂の途中、太田黒公園に近く、周りの住宅はみな区画も大きく緑豊かで住宅地としてとてもよい環境が保たれている中にあります。
比較的道路が狭いところもある中でここは道路幅員も広く、おまけに北と西に接道している角地にあるため、非常に目立つ位置に建つことになります。
恥ずかしいものは作れません。
地上三階建て、2LDKが6戸、1LDKが5戸と比較的一住戸が大きな集合住宅です。
四とか四葉という言葉にゆかりがあるからということもあり、四つの直方体を置き、それぞれが独立して集まっているというようなイメージから作り始めました。建物の名前も「クローバーガーデン」に決まりました。
これはプランも何もない状態でイメージだけで書いたスケッチです。
実際にプランに起こしたものをもとに書いたのがこのスケッチです。
正面から見ると真ん中に廊下が南北に縦断し、東西に大きく二つのボリュームに分かれているような作り方です。
この廊下が室内なのか、屋外なのかというような話も二転三転し、最終的には外部ということになりました。
とはいってもいわゆる片廊下が道路に面しているようなステレオタイプなアパートにはしたくないので、外部空間が建物の南北を貫くような形になります。
北側の道路は幅員も広く緑豊かな街路に面しているため、積極的に北側にも開いた住戸を計画しています。
ベランダの奥行きも1.5mから1.8m確保しました。
分譲マンションに引けを取らない角地で建ぺい率にもゆとりがあるため、奥行きの広いベランダが確保できました。 このベランダは住戸の大きな魅力になっていると思います。もちろん外観にも。
通常、初回のプレゼンテーションの時には時間が許される限り模型を準備していくようにしています。
お客様は平面図や立面図をそれほど見慣れているわけでもなく、空間や形を抽象化した平面図や立面図では情報量が極端に限られ実際の形や空間をしっかり理解できないまま、いいとかダメとか、好き嫌いを判断しなければなリ ません。
その場でパースを書いたり、概念を説明するスケッチを書いたりしても伝わる情報の量はたかが知れています。
事前にパースを持って行っても、ある点からの見え方だけしか説明していないし、それがウォークスルーで内部で動けたとしても動くという行為がすでにストレスになってしまっています。
その点模型は同時にたくさんの視点を持つことができ、分解模型で、内部も表現されていると、建物がどういうものなのか、誰でも把握しやすくなります。
これがもう少し打合せを重ねていくと、今度は実際に自分が中に入った時にどう見えるのか、どういう感じ方になるのかという視点が必要になってくるので、そこで初めてパースやムービーが威力を発揮していくことになります。
それでも、やはり実際に出来上がってみないと、なかなかイメージはつきにくいのだとは思いますが。
大きく非常に高価な物で、作り直しも聞かないものなので、なるべく実態がわかるしようなシミュレーションができるようにしています。 VR等が、もう少し当たり前にできるようになると、誰でも出来上がる前に評価がしやすくなると思いますが、逆に出来上がった時の感動は薄れてしまうかもしれませんね。
打ち合わせを進めていく中で、お客様の好きな物や嫌いな物が少しづつ表面化していき、大きなコンセプトは変わらないようにしながら、形は少しづつ 変化していくことが多いです。
全体的には当初4つもボリュームの集まりだったものが、ギューっと寄ってきてひとつのボリュームになっていきました。全体が大きな一つの塊にまとめていくとたいていきれいな形に収斂していくことが多いです。
よほどのテクニックがない限り、3つ以上のボリュームをまとめてきれいに作っていくのは難しいと考えたほうがよいと思います。
後は適度な大きさ、というか許されるなら大きなもののほうがよいのですが、樹木が入ると俄然建物はイキイキした表情になってきます。
現在足場もはずれて、ようやく建物の形が見えてきました。 これから外構と植栽が入ってくると、当初考えていた、周りの緑豊かな環境と敷地内に植えた樹木の作る環境を住戸内部に取り込んだ豊かな集合住宅が出来上がるはずです。
詳細はまた報告していきたいと思います。
可能であれば完成時にオープンハウス的なことも行いたいと思っています。