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ナニックのウッドブラインド

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荒川圭史

東京デザインオフィスの荒川です。

住宅の計画をしていく過程で考えていくことは多岐にわたります。以前レジデンスブックプランニング編という設計のマニュアルのような資料を作成したときに、数人でブレストしながら自分の思考を文字化するような作業をしました。そこでは大体12の項目を同時に考えながらデザインをしているのだということが見えました。どれが先という規則性は特になく、状況によるのだと思いますが、やはりばらばらといろいろなことをほぼ同時に考えているようです。ですから空間の心地よさに大きな影響を与える照明やカーテンの計画等のインテリアのことも、プランニングの初期段階で考えていることが多い気がします。

カーテンやブラインドの類を総称して「窓掛け」と呼んでいますが、そんな中でも視線や光をコントロールする機能に優れ、存在感も大きいのがブラインドです。

素材はアルミが一般的だと思いますが、アルミのスラットはうかつに触って一度曲がってしまうとほぼもとには戻らず、住宅の空間の中で使うには線がシャープすぎるので使いにくい気がします。そんな中で、ウッドブラインドという選択肢は住宅の設計において非常に有効な場合が多いと思います。

いつから自分がそういう認識をしているのかは分からないのですが、子供の頃は木のブラインドというものは身近にはほとんどなく、オフィスの窓にはちょっとぼやけたグリーンのアルミのブラインドが掛かっていたというイメージがあります。おまけに一部が折れていて、きれいに閉じることができなくなっていたりします。当然垢ぬけた感じはしません。こういうオリーブグリーンのような色は、昔それも大昔でしょうか扇風機とか冷蔵庫などの家電製品によく使われていた気がします。もっと強く印象に残っているのは子供の頃まだ地下鉄にはエアコンが入っていなかったころ、銀座線の駅に、あれはサーキュレーターだったのか扇風機だったのかよくわからないのですがオリーブグリーンの大きなプロペラがゆっくり回っていた記憶が鮮明に残っています。

話が脱線しましたが、そんな昔の事務所にあったようなアルミのブラインドではなく、洋画のワンシーンに登場するブラインドは木製で、高級でおしゃれな感じがするというイメージも刷り込まれているかもしれません。

世の中にはブラインドを販売しているメーカーは多々あり、たいていは誰もが知っているT社とかN社などの大企業で、いろいろな製品のラインナップの一つとしてウッドブラインドも持っているという状況です。そんな中に、ウッドブラインドを専門で作っているNanikというメーカーがあります。特に関心を持って検討した人でないとその名前は知らないことが多いと思いますが、Nanikのウッドブラインドはどうも窓に下げたときの雰囲気が違って見えるのです。

別に輸入品ではなく純国産品なのですが、このブラインドには前段で触れた高級でおしゃれな匂いが漂っています。会社の沿革を見てみると1995年に米国ウィスコンシン州のNanik社から輸入し国内販売をはじめ、翌年ナニックジャパンという会社が設立されているので、やはりルーツはアメリカで、商品に対する文化というか価値観の違いが、見た目のイメージを左右しているのかもしれません。こういう製品はたまにあるのですが、てっきりアメリカ製だと思っていたジャクソンの浴槽が実は国産だという話に近いかもしれません。

なんでも作っている総合メーカーと違い、ウッドブラインドだけを作っているメーカーは自社製品に対するこだわりというか、プライドや立ち位置が少し違うように思います。 (そういう意味ではヘーベルハウスしか作っていない旭化成ホームズも、木でも鉄でもなんでもありの総合住宅メーカーとは違う、という話になればいいのですが。)

少し具体的にウッドブラインドの実例を紹介したいと思います。

日常の計画の中でNanikのウッドブラインドは窓掛けの候補に挙がることも多いのですが、初めてNanikという名前を知ったのは、今はもう存在しませんが2008年にデザインした蒲田住宅展示場の計画のときです。寝室でウッドブラインド、といっても上下に動くのではなくカーテンのように横にスライドしていく木のバーチカルブラインドを使っていました。スラットが中間で何枚かに分割されていて風で複雑に揺らぐ動きが非常に心地よかったのを覚えています。薄いレースのカーテンのように風が視覚化されている感じです。

その後、東京一軒家という住宅でウッドブラインドがもう少し進化した感じの、これもNanikの製品ですがウッドシャッターという建具に組み込まれたブラインドのようなもので、窓掛けというより建具ですが、スラットが連動して回転する鎧戸のような窓掛けを計画しました。この時は北と東からの反射光が頼りの空間の中で、その光を取り込みながら視線はカットしなければならなかったのでウッドシャッターは非常に大きな効果を発揮しました。木のスラットの色むら、真直ぐ過ぎない直線が生み出す光の揺らぎが感じられるとても気持ちの良い空間が生まれました。

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次の例は2層にわたる吹き抜け空間の東面を4分割した大きな窓面に同じ大きさの4枚のブラインドが電動で一斉に動くようにしました。一斉に動く姿は壮観です。

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次の例は階段室に面して幅が1.2mの窓が三層で合計13窓連続しているのですが、この13のすべての窓にウッドブラインドを仕込んでいます。ブラインドがついている部分の手前を少し下げてたたんだ時にブラインドが見えなくなるようにしてあります。三層にわたる13の窓のブラインドをどのように動かすのか、なかなか結論が出せませんでした。結局一斉に動かすのと、階ごとに動かすのをメインにリモコンの設定をしました。


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この夏、東京デザインオフィスの事務所が新宿NSビルの10階から11階に移転したので、打ち合わせコーナーも作り直したのですが、プライバシ-を確保するためのブラインドをアルミの物からにウッドブラインドに変えました。

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スラットがほぼ開いた状態、中間くらいの状態、ほぼ占めた状態の違いがよくわかると思います。ブラインドは視線のコントロールが比較的簡単にできるところがメリットです。

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今回ウッドブラインドを使うということは決めていたのですが、木の色だと全体が重い雰囲気になってしまうので、少しビビッドな色を入れたいと思っていました。またNanikの場合、スラット幅・素材の種類も何パターンかあり、それによっても雰囲気が変わるので、正直どれがいいのか検討がつかなかったので、新宿NSビルからほど近いNanikのショウルームまで直接見に行って話を聞きながら決めました。

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価格のグレードも三段階、色は73色から選ぶことができスラット幅も25mm~最大82mmの物まで6種類から選ぶことができます。シリーズによりますが、例えば1800mm幅で高さ1800mmだと定価で¥60000~と非常にコストパフォーマンスの高い商品もあり、状況に合わせてちょうどよいものを選ぶこともできます。

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Nanikのウッドブラインドが他社の物と比較した時の存在感の違いはどこから来るのかを直接聞いてみました。

・スラットを引き上げたり、おろしたりするためにスラットにコードを通す穴が開いているのですが、この穴が細く光が漏れにくい。

・このコードの編み方の工夫でスラットがきれいにたたみあがる。

・一枚当たり9㎡、例えば3m×3mというような大きなものも作ることもできる。

・一台当たり+5万円で電動にできる。

・巻き上げるギアの比が三種類あり動きがスムーズ。

というようなメリットがあると聞きました。製品が醸し出す雰囲気の違いは、こういう細かいディテールのこだわりの差によって生まれるのだということがよくわかります。

現在進行形で家の計画をされている方もウッドブラインドを検討してみてはどうでしょうか。

Nanik website

木製ウッドブラインドやウッドシャッターの国産メーカーナニック (nanik.co.jp)

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