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港区のレジデンス

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荒川圭史

へーベルハウス東京デザインオフィスの荒川です。

ここ数年都心での建て替え工事の場合、もともと建っていた建物の下に杭が打ってある、もしくは地下室があるというケースが増えています。TDOの最新実例としてアップした「港区のレジデンス」の計画の場合は、さらにRC造の地下室があり、その下には現場造成杭という杭の中でも一番抜くのが困難な杭が打ってありました。さすがに地下室は壊さないと新しい建物は作れないのですが、造成杭は下手をすると1本抜くのに1千万くらいかかってしまいます。そこでどうするかというと、まずは既存の杭をよけながら、新しい建物の杭を配置するというようなことを考えます。元の建物に杭が必要であれば、新しい建物にも必要になるというのは割と当たり前な話です。

それでも現状、どんな杭がどの位置に配置されているのかがわかる資料があれば計画のしようもあるのですが、古いものではそれもよくわからないというケースも多く、ただそのくらい古いものの場合、現場造成杭ということはほぼなくて、電柱のようなプレキャストコンクリートの杭が埋めてあるケースがほとんどなのです。それを抜くのは造成杭を抜くよりは簡単です。そうはいってもかなり大変なのですが。

もっと古いものだと松杭といっている松の木が丸ごと埋めてあるようなものもあったりします。いずれにしても都心の土地を新たに購入する場合は、このあたりはしっかり調べておかないと後が大変です。

今回の場合加えて地下室があり、それを壊さないといけなかったのですが、まずは地下のコンクリート部分を壊します。地下室を壊すときには振動がすごいので、ご近所に対する配慮がとても重要になります。

また地下の躯体を作るときに必ず山留という仮設工事をするのですが、今回もこの山留の親杭といっている30cmくらいの大きさのH鋼が敷地境界に沿って打ち込まれていました。それが新しく施工する建物の杭に当たってしまっていたので、そのH鋼を抜かなければならなかったのですが、抜くための機械はここまで大きな機械が必要ですかというくらい大きな機械で抜いていきました。この話ですでにおなかがいっぱいになってしまいそうですが、ここからやっと計画の話になります。

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かなり大きな建物なのですが、そこは都心の敷地ということもあり、奥行は大きいのですが間口がそれほど広いわけでもなく、二台分のガレージをとると残りはアプローチとしてちょうどよい幅が残るだけとなってしまいます。ガレージを迂回するようなアプローチを計画して玄関はその奥に作ることになります。

ここで問題があります。ガレージ+アプローチをとるとほぼ壁は残らないということになり、地震力を負担する壁や筋交いが必要になる構造ではこういう計画はすでに不可能ということになってしまいます。鉄骨や木造でもラーメン構造でないと構造計画が成り立たないということになってしまいます。

鉄骨でラーメン構造であっても柱がH鋼だったりするとこういう形の構造には不向きで、ヘーベルハウスのFREXの柱のように閉鎖断面といっている四角い横方向にも縦方向にも同じ強さを発揮する構造でないとこの敷地とこの計画にはうまくマッチしないので、すでにこの時点でヘーベルハウスの躯体は大きなアドバンテージがありました。何社かと競合はしたのですが、FREX3がこの敷地には一番ふさわしいという評価をいただけたわけです。

全体の形はガレージ部分からアプローチ部分に二階と三階のボリュームがずれて乗るような形、この形もコンセプトとして世の中には割とありがちなのですが、見ていて美しいと思える形になるように構成しています。ヘーベルハウスでもこの形はよく使われています。

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東隣は奥に立っているマンションの通路で、ここには将来にわたって何も建つことはないはずの通路があり、その隣の敷地はクスノキやケヤキが伸び放題伸びている今は誰も住んでいない家屋があるので、東側は朝日も入り、緑の借景もあるような場所で、当面はここからの採光をあてにして建物に光を取り込むような計画になっています。

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都心の場合、このような恒久的に空地が確保されるわけでもないが、当面はあてになりそうな隣地というのはよく有り、ここをどう読むかは設計者に任されることになります。今回の場合最悪通路の向こうに建物が建っても通路幅分は残るので、それなりに採光は確保されます。都心の建物というのはこうやって影響しあって出来上がっていくのだと思います。

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