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光をデザインすること。

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心地よさをつくる

気持ちのよい空間をつくるための最も基本的なことは、光の性質を理解することです。形や空間などの立体的な建築操作は、光がつくりだす陰影により行われています。極論すれば、昼の自然光であれ、夜の照明の光であれ、光がなければ私たちは空間を認識することができないのです。

私たちが行う住宅設計とは、単に間取り図をつくることではありません。間取り図のような平面図は、建物の構成を理解するために便利なものですが、出来上がった空間を人は平面図のように真上から見ることはなく、ほとんどの場合は水平方向に眺めて空間を感じています。さらに、人は空間に入ると奥行きや高さだけでなく、明るさも無意識に感じていて、なんて気持ちが良いのだろうとか、なんとなく居心地が悪いなどの印象は、光によっても大きく左右されています。つまり自然光の取り込み方や照明の位置を詳細に考えるということは、気持ちのよい空間をつくる上でとても大切なことなのです。

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1)
 自然光の取り込み方を考える

居心地の良い空間をつくるためには、気持ちの良さを生み出す素となる光を外部から取り込んでくる必要があります。一方で、取り込みたくないものもたくさんあり、その出入りを制御する装置そのものが住宅だと言えます。

自然光においては、どのような光をどの方向から取り入れるかが重要になります。例えば、太陽から空間にダイレクトに入ってくる「直射光」は熱も一緒に入ってきます。大きな開口からたっぷりと入る光は、冬は日だまりとなって気持ちよく感じられますが、軒のない現代の家では夏は暑くて不快なものになります。一方、ダイレクトに入らない「天空光」は熱を伴いません。天空光は暗いと思われがちですが、実は思ったより明るいのです。(コンビニやオフィスなど煌々と明るく照らされた空間の照度1,000 [lx] 程度に対し、どんよりと曇った日でも屋外の照度は10,000 [lx] 近くあります。) この天空光をうまく取り込むことで、たとえ北側の窓でも気持ちの良い空間をつくることができるのです。眩しさや熱などのマイナスのイメージが先行しがちな西日も、樹木やブラインドを上手く使いながらコントロールすることが出来れば、木漏れ日が美しい気持ちの良い空間を実現することができます。取り込む光の特性を理解することが、立地条件から得られる最適な光を見つけ出すためのカギとなるのです。

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2) 照明の持つ意味を考える

自然光を取り入れることが太陽の光や位置、動きに対して受動的に考えるのに対して、照明の光は、光源の位置や照らし出すものを自ら選択して決めることができます。但し、私たちが必要としているのは「光」であって、照明器具ではありません。装飾的な意味合いが強い高価なペンダントライトやブラケットライトを選ぶことが重要なのではなく、空間の中にどんな光をつくり込むのか、そこをしっかりと考えて照明器具を選択することが大切だと考えます。

また、空間を快適にするためには、高価な仕上げ材を採用するよりも、光が床・壁・天井などの面にどのように反射し透過するのか、陰影をコントロールするための照明をしっかり考える方が、質の高い空間をつくる上でのコストパフォーマンスが良いと言えます。そして、空間の魅力を光で引き出すためには空間の縦と横の広がり、連続性、境界などを立体的に読み取り、照明器具が持つ明るさ、高さや壁面からの距離、寸法などをひとつひとつ詳細に検討することが必要です。

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光そのものは実際に目にすることができません。人が光を感じるときは大きく三つに大別されます。ひとつは、月のように光が何かに反射して明るく見える反射光。二つ目は、障子のように光が素材を通過して明るく見える透過光。そして、三つ目は太陽や電球のような光源です。光源を直視すると不快で眩しく、美しさや気持ちの良さは逃げていってしまいますから、住宅設計においては、先の二つのように面に反射させたり透過させたりすることで過剰な明るさを和らげることを考えていきます。自然光・照明どちらにおいても、この光を受ける面を意識して計画することが気持ちの良い空間をつくるポイントになります。

面がつくる光のグラデーションと、昼と夜の移り変わりを含めたストーリーを光からデザインしていくことで、建物や空間のグレードをさらに高いものにすることができるのです。

監修 / LIGHTOWL DESIGNS 向平 知弘

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