東京デザインオフィスの荒川です。
昨日は川崎の住宅のオープンハウスに多くの方におこしいただき、ありがとうござい
ました。来ていただいた方がみな比較的長時間滞在されていたような気がします。
展示場や街かどヘーベルハウスの計画をしたときはいつも感じることですが、なんと
なくその場を離れにくいとか、気になってまたそこに戻ってくるような場所が作れたら、
成功だと思っています。昨日の川崎の住宅は、特に寝室が気持ちよさそうという感想
をいただきました。
生活時間のずれから階下の音を寝室で気にしなくても良いような状態にすることを望
まれましたが、寝室に入るまでの間に3箇所引き戸を設けているので、それらのすべて
を閉めるとほとんど音は聞こえない状態になります。引き戸を多用しているのは、あけた
状態と閉めた状態で領域が変化するので気温や風の強さ、生活の時間帯等、そのとき
の状況に合わせて使い分けが出来るからです。寝室と廊下の間の3枚扉を引き込むと
廊下は寝室と一体の空間になり風が通り抜ける気持ちのよい寝室が出来上がります。
ちょっと毛色の違う話ですが、都心ではエコキュートやエネファームは貯湯タンクが大
きくて置ききれないことが多いのですが、ピロティを車庫に使っている場合は柱の厚み
の部分にこんな風に置くことが出来ます。
リビングは完全な直方体でこのシンプルというよりは単純な空間をどう居心地良い場所
にしていくかということもこの住宅のテーマでしたが、今回はGlo-Ballという照明器具と
シルエットシェードという布のブラインドに働いてもらいました。
ダウンライトやむき出しの照明はランプの輝度が高く直接目に入るとまぶしくて不快な
ので、間接照明にしたり、器具自体にセードが付いているわけですが、Glo-Ballはセー
ドが大きくかつ光が均一に広がり光斑がまったくありません。これ以上明るいとハレー
ションを起こして輪郭がぼやけてしまうのですが、こんな風にはっきり認識できます。
ちょうど満月を見ているような感覚です。器具自体を見ていて心地よいということは、
普通なら何とか光源が見えないように計画するのですが、逆になるべくたくさんの
器具が見えるような計画をしたほうが面白い状態が出来上がるわけです。
さて本物の器具はいくつあるでしょうか?
今回暗くなってガラス面に器具が写りこむ時間まで待っていたのですが、特に吹き
抜け部分には大きなガラスの引き戸を設け、突き当たりに大きなはめ殺しのガラス
がある中にGlo-Ballが浮いている状況を作ったので、写りこみがさらに反復して、器
具がいくつも浮いているように見えています。この写真の中に見えている器具のうち
本物は実は一番下に見えている一つだけなんです。
外を見るとここにもたくさんの光の玉が浮いています。
ちょっとひいてみると床にも反射してあちらこちらに光源があるように見えていました。
昼間窓から自然光を取り込む場合、なるべく光がにじんでいくように、表面がざらざら
した仕上げを使うことが多いのですが、今回のような計画の場合ガラスや光沢のある
ウレタン塗装をした床材などのツルピカ系の材料のほうが効果が大きいことがわかり
ました。ガラス面も写りこみまで意識して使うと、面白い空間になります。
夜は暗いガラス面を見るのが怖いこともあると思いますが、障子やこのシルエットシェー
ドのようなきれいな透過面を作ると、外からは建物そのものが行灯のような照明器具に
見えます。このシェード面の輝度も、ちょうど良い明るさになっているのだと思います。
光の見せ方、感じ方はとても奥が深いです。