東京デザインオフィスの牧野です。
以前、計画段階でご紹介した、「三軒茶屋の住宅」 の躯体がほぼ完成しました。
周囲を住宅で囲まれた中で、どうやって居心地のよい空間をつくるか?
この計画で検討してきたことが、少しずつ形になってきました。
この建物がおかれている環境のなかで、どこから、どんな光をもらうか?
いくつかの試みを、ご紹介します。
これは、南西からの外観です。南側は今はあいていますが、将来的には、
建物が建つことになる敷地です。
建物、北側の外観です。北側隣地は当面の間は、駐車場として、空地
が確保されています。3階が斜めになっているのは、第2種高度地区
という、北側斜線制限の法規制によるものです。
東西方向は、手が届くほど隣家が迫っている状況です。
これは、2階のダイニングに設置した高窓です。天井近くにあって、隣家の
屋根越しの光をとどけてくれます。
実は、この窓が、この建物の中で、唯一 南向きについている窓なんです。
南側だからといって、隣家との関係性を無視して、窓を切っても、たいていの場合、得られるものは
ありません。下手をすれば、隣家の窓と向かい合わせになって、常に締め切っていなければ
ならなかったり、防犯上の弱点になってしまうことさえあります。
東側にとった腰高の窓です。キッチンに立って、ダイニングを見たところです。
東側は隣家がせまっていますが、少しだけ、隣家が庭として使っている場所があり、
その空地にむけて、この窓は開かれています。隣家の庭の緑を借景することと
、ダイニングに朝日を取り込むために、この位置につけられています。
リビングからダイニング方向を見ています。正面の南面はほぼ閉じられていますが、
オープンスペースに開いた、窓をきちんととることで、丁度良い明るさが得られます。
反対に、ダイニングから北側にあるリビングを見たところです。
正面の小さなベランダの前の掃き出しの窓は、北をむいていますが、
前面が駐車場で、開かれているので、やさしい明るさが確保されています。
直達の日射が届かなくても、ある程度の空間があれば、方位に関係なく
きちんと、天空光がえられますし、その光は、南側のギラギラした光よりも
むしろ、やさしく、疲れない光でさえあるんです。
加えて、ここでは、トップライトで、上からの光を落としています。
北側の駐車場にも、近い将来建物が建ってしまう可能性がないとはいえないので、
そのときのためにも、将来も邪魔されること無く光を届けてくれる、トップライト
を設置しました。
トップライトからの光は、通常の窓からの光と違って、壁面に反射しながら、
目に入ってくるので、壁面のテクスチャーによって、いろいろな表情を見せて
くれます。
正面からトップライトを見たところです。今回の家具のレイアウトだと、
丁度、ソファに座って、TVボードのほうを見ると、こんな見え方をするはずです。
家の中心にある、階段に設置した窓です。上部の縦長の窓は、3階の高さにあり、
窓の外の隣家が2階建てのため、屋根越しに沢山の光を届けてくれます。
それに対して、下部の窓は、隣家が重なっているので、ほとんど光は得られ
ません。これは通風用として、設置した窓です。夏の階段に溜まる熱気を
逃がしてくれると思います。
これは、キッチンから、階段、リビングの方向を見た写真です。
階段窓からの直達の日射が、壁に反射しています。
今回はそういう素材は使っていませんが、意図して、直達の日差しを
タイル等の光沢のある仕上げで、反射させて、その揺らぎをつくることも
光の楽しみ方の一つかもしれません。
3階は、周囲の建物より、今は頭一つ飛び出ているので、十分過ぎるほどの
光が入ってきます。ここでは、むしろその制御の方法が課題になってきます。
同じく 3階の西面に設置した、「モンドリアンウインドウ」 です。
この窓には、3つの役割があります。
一つは、この窓越しに見える、街の景観を楽しめるようにすること。
二つめは、近い将来、この建物の唯一のファサードになる、西側の外観を整えること。
そして三つめは、代用進入口といって、万一の火事のときに、消防隊が、救助するため。
蛇足ですが、この「モンドリアンウインドウ」という名前、建築業界ではまったくポピュラー
なものではありません。ヘーベルハウスのスタッフが、モンドリアンの抽象画みたい・・
ということで、命名してしまったようです。すみません・・・・・。
これから、内部の工事に進んでいきます。2ヵ月後、足場が取れて、内装が仕上がって、
それぞれの窓が、どんな光を、どんな景色を届けてくれるか、今からとても楽しみです。