東京デザインオフィスの荒川です。
今回、豪徳寺の東京一軒家「はなまねき」では花と緑をテーマに空間を作ってきたわけですが、そのベースにあるものは、いつもやっていることと何か変わるわけではなく、どうすれば気持ちの良い空間が出きるかということを花と緑を軸に考えてきたわけです。
今はなくなってしまった、瀬田FREX展示場や街かどヘーベルハウス「品川かぜのとう」を計画していた頃から光や風・熱・景色・緑・素材などきもちのよさを生み出すファクターをいろいろと検討してきました。
現在では、重要なファクターは全部で12個くらいありそうだと考えています。
全国の設計の担当を対象とした研修で使うためのテキストを作っていく中で、日頃自分がなにを考えて設計にあたっているのかを、第三者の目も交えながら、ブレストしていったのですが、その中 で12個のファクターというかレイヤーが浮かび上がり、設計をする作業の中で、これら12個のファクターを順番に検討して行くわけではなく、どちらかというと、何度も何度もぐるぐる回りながら、その場所 で一番気持ちの良いだろうと思われる場所を作り上げていくというのが今行っている設計のプロセスです。
その中で、緑というのは内・外に限らず、きもちよさを生み出すかなり大きなファクターになっているのは間違いないと確信しています。
ただ、ここで言っている「緑」という言葉には緑と花の区別はなく、ほぼ同じような意味で使ってしまっているということについ最近のブレストの中で、ようやく気付くことができました。
住宅を作るというか、気持ち良さを作る上で、変わるものと変わらないものを意識して、それぞれのファクターの持つLife timeがどれくらいなのかということを意識してデザインしていくということが とても重要だということを改めて認識させられました。
緑はその中間くらいのファクターで、Life timeは比較的長く、建築側に比較的近いと思うのですが、それに比べて花は、かなり短時間でライフタイムが終わってしまうので、建築を作るというよりは、インスタレーションに近い物で、瞬間にパッと力を発揮して散っていく物なんだという当たり前のことをようやく認識できたというのが、今回の計画の中で得ることができたかなり大きな収穫でした。
ただし花は種の持続のために、咲かせることに大きなエネルギーを使い、だからこそ大きなパワーがあり、人を引きつける力があるんだと思います。 桜が咲木誇る数週間の間にそこに人が群がるように、それがテーブルの上の一輪の花であっても大きなちからを持つのだと、なんとなく意識できるようになりました。
東京一軒家「はなまねき」は、比較的Life timeの長いグリーンと、一瞬で力をを放つ花を生活の中に取り込んでいくことで、豊かな気持ちの良い住まい、空間がうまれることを実 験する装置なんです。