東京デザインオフィスの為田です。
先週、荒川とお手伝いしていた、大田区の二世帯住宅をお引渡ししました。
完全独立タイプですが、室内に世帯間のドアがあります。
この二世帯住宅の計画のご相談を最初にいただいたのは、
なんと、今から10年も前のことです。
建築する前に解決すべき問題の大きさと数は、私の経験の中でも最大でした。
そのため、断片的に問題にアタックしては、中断したり、計画を何度も修正
したりしていましたが、状況の変化の様子を見ながら、考えている間に、
10年の歳月が過ぎてしまいました。
そのような状況の中、昨年、ご主人から、決意表明をいただきました。
「来年中に家を完成させたい。もうやらないと建てる意味がない。」
それは、ご両親が10年分、齢を重ねられたことと同義でした。
親孝行の気持ちが、ヒシヒシと伝わってきたことを覚えています。
そして、問題解決のロードマップを作成し、一つ一つ解決していきました。
決して、全てが順調ではなく、冷や冷やしたことも何度もありました。
そして、目標通り完成し、来年のお正月は、新しい二世帯住宅で迎えて
いただけることになったのです。
これは、1階の親世帯様のLDの床上げ和室です。
左奥のスペースには、ご仏壇と思い出のある和箪笥が置かれる予定です。
その右側の壁に、小さな飾り棚を造作しました。
その飾り棚は、以前のご両親様のお住まいの床柱の一部を再利用しています。
お母様のお母様が、当時、大工さんと一緒に探しに出かけて選んだ来た、
床柱なのだそうです。大工さんも床柱が固くて、大変だと泣いていたと。
この飾り棚も、お母様とお打合せした訳ではないので、完成を見た時の、
お母様のお喜びの様子は、それは、予想以上のものでした。
今回の飾り棚の床柱の部分が、前のどの部分なのかもすぐ分かる様子でした。
飾りたい小物の話しが、お母様の口から、次々と出てきます。
周りでは、それを皆がニコニコと聞いてきました。
今回の新築の大工さんも、固い床柱と苦闘し、ノコギリの歯が二つダメになった
とのことでした。本物の黒檀だったからです。
どんな風に再利用しようかと考えて、荒川が描いたスケッチがこれです。
マルホンのウォールナット材で、上下をサンドイッチしています。
完成にあたって、ご両親様へ設備まわりの使い方のご説明をしましたが、
シングルレバー水栓で、水とお湯が出るだけで、お父様はびっくりされて
いました。床暖房に、浴室暖房、使えるだろうかとご心配でした。
分からなかったら、2階から、お孫さんが応援に来てくれます。
初めて使う、体面キッチン。
今後、カウンター越しのお二人の楽しい会話が、聞こえてきそうで、写真を
撮らせていただきました。
親孝行できていない僕の方まで、親孝行の達成感を味わうことのできた、
思い出に残るお住まいになりました。