スタッフからの最新情報

へーベルハウス東京デザインオフィスのマツオです。

成城モデルでは、CHIE SAIKI ART PROJECTS監修により、ダイナミックな空間全てをギャラリーに見立て、モダンアートを多数展示しています。作風もモチーフもさまざまですが、いずれもこれから大きな活躍が期待される若手アーティストの作品です。その作家と作品を数回に渡ってご紹介します。

第一回は湯浅克俊さん。

こちらの作品は成城モデル１階ゲスト用寝室に展示しています。

サイズは120cm×210cm、住空間に飾る絵としては大き目のサイズ感です。

作品のタイトルは

「All Of The Natural Movements Of The Soul Are Controlled By Laws Analogous To Those Of Physical Gravity」

むむ、なんとも哲学的です。

魂も物質と同じく下へ下へと向かう重力の法則に支配されている・・・そこから逃れることはできないという悲劇的印象はありながらも、湯浅さんの作品からは光明や、妖しさすら感じます。そしてこの作品、一見素材はテキスタイルを思わせ、細密で写真的な表現ですが、実は版画。しかもスクリーンプリントではなく、木版画（油性木版画）、手摺りです。

これ、版画か・・・。木版画は写実的表現や印象の再現性が低い技法だという思い込みが、がらがらと音をたてて崩壊すること間違いなし。

ご自身で撮影された写真を元に制作されているそうですが、デジタルから最も遠い木版という技法を選ばれていることにも興味が深まります。湯浅さんが木を彫ることで生まれる陰影はその目を通した「露出」で、紙に摺ることで生まれる表情は「露光」だということなのでしょうか。ぜひ、実物を近くでご覧いただきたい作品です。

そしてこの作品の展示前に、同じ壁面に飾っていたのがこちら。

「Sangenes Sang A.P.」
【制作年】2015年
【サイズ】100cm×200cm

オスロで撮影した写真を元に制作されたそうです。北欧の光を刻んだ作品が、緑を切り取とった空間の魅力を引き出していました。ギャラリーのホワイトキューブで作品に没入して鑑賞するのはもちろん、こうして住空間に取り入れる楽しさもまたアートの魅力だと思います。

クラシックな静物画がモチーフの下の２作品は３階主寝室で展示中です。

「Death of beauty #1」「 Death of beauty #2」
【素材】水性木版画に油性木版画 ２版２色刷り 油性版画インク、水性絵の具、和紙
【制作年】2014年
【サイズ】65.5cm x50cm

なお、湯浅さんの作品は、2018年7月14日～9月24日まで横浜美術館で開催される「モネそれからの100年」に展示されます。 モネの初期から晩年までの絵画と、後世代の作家との結びつきを浮き彫りする展覧会で、ロスコやリヒター、リキテンスタインなどと並んでの出展です。この夏の楽しみがひとつ増えました。

ぜひ成城モデルにも湯浅さんの作品を鑑賞にいらしてください。

成城モデルについて詳しくはこちら。

湯浅克俊　Katsutoshi Yuasa

【学歴】
2002年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業後、渡英(4年間、奨学金を得る)
2005年 ロイヤルカレッジオブアート修士課程版画学科修了 (2年間、奨学金を得る)

【受賞・助成金】
2001年 The 6th Gunma Biennale Award
2005年 Royal College of Art Publishing Prize 受賞
2005年 Davis Langdon Award 受賞
2005年 Clifford Chance Purchase Prize 作品買い上げ賞受賞
2006年 The Nomura Cultural Foundation Fellowship 野村国際文化財団からの助成
2006年 Esquire Digital Photograph Awards 06-07, Won Judge's Award
　　　　　 エスクァイア日本版デジタル写真賞06-07 審査員賞（後藤繁雄氏選）
2007年 Musashino Art University Paris Award 武蔵野美術大学パリ賞
2011年 Towry Print Prize in the Summer Exhibition 2011 受賞
2011年 Northern Print Award 受賞
2015年 2015 Guanlan International Print Biennale 入賞
2015年 CWAJ現代版画展 ６０周年記念大賞展 入賞