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【HailMary7月号掲載分】ハウスデザイナーからの手紙 #3

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ハウスデザイナーからの手紙

東京デザインオフィスのマツオです。

現在発売中のヘイルメリー8月号に荒川のエッセイ「住宅をつくるということ」の第4回が掲載されています。今回、当blogでは前号7月号掲載の「住宅を作るということ 第3回」の全文を転載いたします。

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【ヘイルメリー7月号掲載】

ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第3回」

住宅とは光を取り込む装置である。

住空間の質は光や熱と密接な関係にあります。光がなければそもそも空間は成立しないので光と空間の関係が理解できていないと、まともな設計はできないと思います。

実際の計画ではお客様に会う前に現地を見て気持ちの良さの素になる光を探し、お客様と共有化します。それがいい設計につながります。都市型の住宅では、北側からの光をとり込んだほうが良い場合もあるのですが、家を建てる人の頭の中は、南から燦々と光が降り注ぐ暖かい部屋というイメージが定着しているのか「北側から光を取り込みましょう」とか「庭を北側に取りましょう」などと話すと「えっ」ということになります。はじめに時間をかけてどうすれば気持ちの良さにつながる光を取り込めるのかを共有化することが良い家を作る近道になります。

大抵の土地では南側は隣の家が斜線制限ギリギリときには基準法すら守っていないのではというくらいまで迫ってきていることもあり、これではいくら南側に大きな窓を設けても直射光はおろか天空光すら入ってきません。

光の入らない窓は不気味ですらあります。

高度規制が厳しい都内の低層のエリアでも敷地の境界から7m以上離れないと冬至のお昼ごろ、一階に直射光は入りません。そんなことをしたら多くの家は隣にはみ出してしまいます。

では都市で明るい家はできないのかというと、実際は東西南北のどこかに抜けている方向はあるもので、そこには光があります。それを探してどうにかして内部に取り込んでいきます。北側が抜けている場合直射光は入りませんが、空が見えていれば天空光は入ってきます。これはかなり気持ちが良い空間なのですが、いくら言葉で説明してもなかなか理解できないと思いますので、百聞は一見にしかず、小金井市にある江戸東京たてもの園に移築保存された常盤台写真場という建物の写真スタジオを見てくることをお勧めします。

P1030819.jpg江戸東京たてもの園に移築保存された常盤台写真場の写真スタジオ。モダニズム建築の全盛期だった昭和12年に竣工された建物で、この写真場の吹き抜けの天井の北面には大きな窓があり、そこから天空光を取り込んでいる。

吹き抜けた高い天井の北面に大きな窓があり、そこから燦々と天空光が降り注いでいます。これならフラッシュがなくとも撮影ができるくらい明るいわけです。北側の開口は、いくら大きくても熱が入らないので夏暑くてたまらんということにはなりません。設計者としてはとても気が楽です。ただし冬はコールドドラフトという現象が起き断熱性能が低い大きなガラス面が吹き抜け上部にあると、ガラス越しに冷えた空気がガラスを伝って下に降りてきます。そこに階段があったりすると冷気がぞわぞわと階段を降りてくるのが見えるほど不快な状態になってしまいます。ただ最近は窓ガラスの断熱性能も向上し、ガラスが三枚、空気層が二重になったトリプルガラスというようなものもでき、以前ほどコールドドラフトの心配をする必要はなくなっています。

南面は窓上に庇があれば冬は軒下から奥まで光と熱が入りこみ、夏は庇で熱がカットされるオールマイティな状態が作れます。昔の家には黙っていても窓上に庇がありましたが、今のビル型の建物は意図しないと庇がないという状態になり、悲劇が起きます。また東や西は軒があっても直射光が入る朝や夕の太陽高度は低く、庇は役に立たないため、遮熱ガラスを使う、外側にシェードを設けるなどの工夫は必要です。直射光と天空光の違いを理解して方位、季節、時間帯による太陽の光と熱の移り変わりを理解していれば、南側採光が無理でも、明るくて気持ちの良い住宅を作ることはできるのです。

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