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【HailMary10月号掲載分】ハウスデザイナーからの手紙 #6

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ハウスデザイナーからの手紙

【ヘイルメリー10月号掲載】

ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第6回」

都会の真ん中に住宅を作ってみた

今回は気持ちの良さを考えるうえでターニングポイントになった計画のことを記します。

もう10年も前になります。「かぜのとう」という住宅を計画しました。敷地は準工業地域にあり、日当たりは悪く周辺に緑もない、町工場と住宅が入り混じった場所で、東京の下町にはありがちな風景の中にありました。住宅地としては劣悪な条件ですが、そのほうが望ましいと考えていました。この計画は、条件の悪さを計画力とヘーベルハウスの技術力でいかに克服して気持ちの良い空間を実現するかを見てもらうための計画だったからです。もくろみ通り、かぜのとうは当時「みどりのそよか~ぜ」という歌に合わせたヘーベルハウスのCMにも登場し、非常に気持ちの良い空間がそこに出来上がりました。

しかし今回の主題はその話ではなく、3年後に計画した「東京一軒家」と呼んでいる住宅の話です。

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かぜのとうに気をよくし、どんな場所でも気持ちの良い住宅はできると、自信過剰になっていたのですが、その自信はわずか3年で打ち砕かれることとなりました。東京一軒家の敷地は普通とは少し状況が違っていました。気持ちの良さの素が見つかりません。かぜのとうがある街は密集しているとはいえ、周囲の建物は2階建てか3階建て、3階や屋上に上がれば日照もとれるし、単純に明るさを確保する方法を考えればよかったのですが、東京一軒家の敷地はもう少し都心にあり周囲は4階、5階のアパートが建ち並び、南道路なのにそこからは日照は取れず、おまけに裏側には14階建てのマンションがそびえたっていました。少し離れると30階建てくらいのビルもあり、はるか遠くから高層ビルの影が伸びてくるような敷地で、日照が入るのは建物の隙間からわずか一時間というような厳しい状況でした。かぜのとうの設計手法の延長ではいくら考えてもなかなか周りに納得してもらえるような物ができず、思い悩んでいました。

暗くてもいいんじゃないの、というアドバイスから暗くて気持ちの良い家を作ろうと考えることで気負いもなくなり、いろいろアイデアも出てきました。

中がのぞける模型を作って敷地に持っていき、どんな光が入るのかをシミュレーションしている時に北側から光が射しているのに気が付きました。よく見ると、敷地を通り越して裏のマンションに射した光が反射して戻っていました。都会では回りのビルからの反射光という種類の光もあるのです。もちろん最後はトップライトからの天空光にも頼り、使えそうな光は使い切ったのですが、それでも万全というわけにはいかず、旭化成ホームズが誇る住宅総合技術研究所に相談してみました。

光が弱い場合、障子など透過性のあるものは気持ちの良さを生み出さず、ブラインドのような格子状の物の方が光を感じやすいとか、白い壁は白く見えずに薄暗い雰囲気を助長してしまうので、インテリアは少し色がついているほうが良いなど、思わず「へー」と言ってしまいそうなアドバイスももらい、ブラインドで北側のビルからの反射光を天井に反射させ、壁や天井には少し光沢と色気のある漆喰を塗り、考えうることは全て盛り込んでみると、見たことが無い暗くて気持ちいい、ちょうどいいサイズの空間が出来上がりました。この住宅の計画を通じて設計の考え方のバリエーションが少し広がったのです。

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