東京デザインオフィスのマツオです。
ヘイルメリーに連載中の荒川のエッセイ「ハウスデザイナーからの手紙」も9回目になりました。今回は2018年度グッドデザイン賞を受賞した街かどへーベルハウス豪徳寺「はなまねき」の計画で、荒川が考えていた街と住宅のかかわりについてのお話です。
はなまねきについては、こちらで詳しくご紹介しています。内覧会を開催しておりますので、お気軽にご来場ください。
街かどへーベルハウス豪徳寺「はなまねき」
【ヘイルメリー2019年1月号掲載】
ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第9回」
街と住宅の関係を考える3
住宅を気持ちの良いものにするために、その素になるものを探し出し、内部に取り込むことが必要ですが、やみくもに外とつながることでは気持ちの良い空間は生まれないし、かといって囲い込み過ぎてもそれでうまくいくとも限らず、住宅と街はちょうど良い距離関係を保つことが必要です。そのための装置をインターフェイスと呼んでいるのですが、これは内部と外部の距離であったり、外のにぎやかさであったり、状況によってその姿さまざまな形に変えていく必要があります。前回木の格子の話を書きましたが、今回は緑を使ったインターフェイスのアイデアを紹介します。
昨年世田谷区豪徳寺に「はなまねき」という住宅を計画し、緑を使ってスクリーンを作りました。緑のスクリーンというと、真っ先に思いつくのは生垣だと思います。悪いわけではないのですが、変化がないというかひねりがなく、面白みとか気持ちの良さにはなかなか結びつかなそうなので、自然だけの力に頼るのでもなく、かといってアルミや木だけの構造物を作るのでもなく人工的な骨格を持った構造物に緑というある意味予測できないランダムな物を纏わせることで、見え隠れする予期せぬ発見が生まれる状況を作りたいと思いました。
最終的に作ったものはランダムな格子状の棚に様々な大きさのプランターをはめ、そこに多様な植物を埋め込んでいく形のインターフェイスです。その緑のスクリーンの内側に室内とフラットに繋がる屋外のテラスを設け、ここは屋根のかかったいわゆる中間領域であり、その奥にフルオープンできる開口部でテラスとつながる室内空間を設けるという構成になっています。どこにいても街の気配を感じつつ、ある程度プライバシーも守れる心地よさを持った空間がうまれました。これはもう住宅や建築を設計するものとして、室内と屋外を等価に扱いたいという本能のような衝動に駆られるままに作ったような空間です。
一年が過ぎ緑も落ち着きを持ち始め、街と住宅がとてもよい関係を生み出し始めました。
2018年度のGOOD DESIGN AWARDでも、「通りに面してプランターの棚を設え、内側に緑に囲まれたテラスを作ることで適度にプライバシーを守りながらも街に開いた魅力的な住宅が実現されている。プランターの棚は塀ほどに閉鎖的でもなく、生垣よりは安心感のある囲い方となっていて、住環境を良くするだけでなく、魅力的な街並みを作るのにも寄与しているのが良い。道路に面した住宅の建ち方として一般性のある提案となっていると思う」という評価をいただいています。狙い通りです。この「はなまねきウォール」、街と住宅の良い関係を生み出す商品として製品化したいものです。この住宅は建売住宅として計画していますが、見学することもできます。機会があればぜひご覧ください。