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【HailMary4月号掲載分】ハウスデザイナーからの手紙 #12

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ハウスデザイナーからの手紙

【ヘイルメリー2019年4月号掲載】

ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第12回」

街と住宅の関係を考える6

今回もしつこく街と住宅の関係を考えてみます(笑)。

事例としてあげるのは、東京でも郊外にあり、建蔽率が40%で非常にゆったりした密度の街の中での計画です。

敷地も大きく、敷地の60%に当たる空地はかなりの大きさになります。こうなると、建物回りの計画も普段は外構と言っているものが、ランドスケープというすこし大仰なものに変化していきます。そこで、いつも一緒に仕事をしているインテリアコーディネーター、家具デザイナー、照明デザイナーに、ランドスケープデザイナーを加えてしっかりと庭のコンセプトを立案しながら計画しています。敷地は南側と東側の二方向で接道しているのですが、アプローチは道幅4mのヒューマンスケールな私道側にとっています。もう一方の南側の道路は歩道もあってバスが通っているような大通りです。今回考えていくのはこのバス通りと敷地の関係です。

建物と道路の間には大きな空地が存在するので、その空地というか庭自体がインターフェイスといえないこともないのですが、やはり他人が安易に敷地の中に入ってきてしまうような計画では安心感もなく居心地も悪くなってしまいます。このため道路に一番近い部分にインターフェイスとなる背の高いコンクリートの壁を作って内側を守るという発想が自然に出きてきます。ただ、住宅街にある2.7mの高さのべったりとしたコンクリートの塀というものを冷静に考えると、室内からはかなり距離もあるので、圧迫感よりは、安心感を覚えるような存在になりますが、塀の外を歩いている人のことを考えると、ほぼ刑務所の脇を歩いているかのごとく圧迫感と威圧感を感じてしまうはずです。

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そこで街路空間にも潤いとか面白さを生み出すことをなにか考えていく必要があります。塀の内側は、ランドスケープデザイナーが京都円通寺をモチーフに、視線の一番奥にあるRCの壁を比叡山の借景に見立て、その間の空間を折り重なるレイヤーを構成するようなコンセプトを立ててくれました。この話は近いうちに詳しく書いてみたいと思います。外部との関係をうまく保っていくためには内と外をつなげる穴を開けていけばよいという気はするのですが、いったいどんな穴をあければよいのか...。紙の上になんとなく絵を描いていたのですが、見た目でなんとなく気持ちの落ち着く位置に穴をあけるというだけではどうも腑に落ちるようなものができません。どうしてもあざとさが際立ち、こういうものはデザインとはいえない。そう感じながら、まずは他人に入ってもらっては困るので穴の巾は120mm以下とし...というように機能的に絞り込んでいくと、これは以前この連載で書いた窓の話とまったく同じだと気がつきました。

この大きなコンクリートの壁に窓を開ければよいことに気がつき、そうすると割と簡単にデザインができあがったのです。風と光は透過したほうがよく、でも人は入ってもらっては困るが、壁の向こうとこちらが植物でつながるというのはいいかも知れない。ということで、こんな塀のデザインが出来上がりました。人を通さないためにはスリット状の穴をあけるのですが、縦にスリットをきると光は奥のほうまで入り込み、横にあけるとその塀の両側を緑でつなげる窓ができる。こうすればプライバシーを守る堅固な壁にも潤いと面白みが生まれるのではないかと考えたわけです。

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