【ヘイルメリーマガジン 2020年8月号掲載】
ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第22回」
地下室を作る その2
今回は地下室を計画するうえで考えなければならないことを、いくつか書いていきたいと思います。
まず地下室とか地階となんとなく使っている言葉ですが、建築基準法では、
- 階数は一階なのか地階なのか
- 建築面積には算入されるのか
- 容積には算入されるのか
- 構造的に地下室と考えて良いか
という4つの見方があり、一口に地下室といっても同じようには扱えません。
よく「半地下」というあいまいな表現を耳にします。雰囲気は伝わるのですが、正確な言葉ではありません。またそれぞれの定義に当てはまるかどうかを考えるうえで平均地盤面というものを考えなくてはならないのですが、話がますます複雑になり面白い話でもないのでここでは細かな話は省略します。
日頃、実際に設計をしている中では、平らな土地に地下を掘るというのはごくまれなことで、実際の敷地は道路より高い場合が多く、地下車庫を作りたい、同時に玄関も地下に設け道路からフラットに入りたい、と考えることが地下の計画が始まる出発点になっているケースが多い気がします。そうなると上記の4つの内容をしっかり理解し、メリットを享受できる計画を立てていくことが必要になります。が、ここでは伝えきれるわけもないので、いま実際に地下室の計画を考えていて、もっと詳しい話を知りたいという方は連絡いただければお答えします。
今回一番伝えたいのは基準法の解釈の話ではなく、分っているようで正確に分っていないだろうと思われる地下室の特徴というか、意識しておく必要がある問題で、これからその話を書きたいと思います。
地下室と聞いた瞬間に思い当たることは何でしょうか。
なんとなく暗くてじめじめしていてカビ臭いという印象をお持ちの方は多いのではないかと思います。だから地下室は作りたくないと。ましてや納戸や書庫なんてすぐにカビが生えちゃうよと。これは住宅に限らずオフィスビルでも同じで、以前いた事務所のあったビルの地下の会議室は入った瞬間になんとも言えない甘酸っぱい明らかにカビのにおいがしていました。これには当然そうなるべくしてなってしまっている理由があります。ですからその原因をしっかり理解して有効な対策を打てば、地下空間は非常に快適なものになります。どんなことでもそうですが、むやみに心配になるのは正体のわからないお化けを怖がるようなもので、原因さえしっかり掴んでしまえばあとは対策を考えればよいだけの話で、怖がる必要はありません。そして地下室の場合、このお化けの正体はずばり、夏型の空気結露なのです。
この結露は本当に信じられないくらいの量で、工事中躯体表面にびっしり水滴がついているのを見ると、これは結露ではなく地下水が漏れだしているのだと勘違いするくらいです。本当に躯体から地下水がしみだしていたら一大事ですが。
ちょっと話がわきにそれますが、結露の話の前に、防水のことを書いておきます。地下水位が低くコンクリートがしっかり打設されていれば、そうそう水が染み出してくるようなことはありません。まれに少し掘っただけで水が染み出し、掘った穴に池ができてしまうような土地もあります。そんなところでもお金をかければ地下を作ることができないことはありませんが、工事中の山留だけでなく完成した後も地下水を止めるか、もしくは受け流す必要があり、リスクもコストも飛躍的に高くなってしまいます。ですのでこのような場所にあえて地下室を作ることはお勧めしていません。もっとも水位が低かろうが高かろうが、防水はしていますが。
話を戻し、いよいよ問題の夏型の結露の話に入りたいと思いますが、誌面が足りなくなってしまいました。その原因と対策は次回に書かせていただきます。