スタッフからの最新情報

【HailMary11月号掲載分】ハウスデザイナーからの手紙 #23

CATEGORY:
ハウスデザイナーからの手紙

ヘイルメリーマガジン 2020年11月号掲載

ハウスデザイナーからの手紙 「住宅を作るということ 第23回」

地下室を作る その3

前回地下室がカビ臭いのは夏型の空気結露が問題だと問題提起だけして終わってしまっていました。

地下室を計画するうえで気をつけなければならないことは多々あるのですが、中でも重要なこと、というかそれが問題だと気付きにくい厄介な話、それが夏型の結露です。そこでなぜ夏に地下室で結露が発生するのかという理屈を説明しておきます。

普通結露といわれて誰でも思い浮かぶのは冬に窓ガラスがびっしょり濡れてしまうという状態ではないか思います。ようするに暖かい湿った空気が冷たいものに触れて空気中の水蒸気が空気中に存在できなくなり水になって冷たいものの表面にびっしりついてしまうのです。この原則はどんな場合も変わらないのですが、地下空間ではこれが夏に起こるのです。

夏の外気が例えば28度で湿度が80%だったとします。土の中は季節を通じて比較的温度が一定なので相対的に夏は冷たく冬は暖かいという状態になっています。

エコエコと今よりも大騒ぎをしていた頃、地熱を利用したヒートポンプがヘーベルハウスでも採用されていました。地熱利用というと地下のマグマの熱を利用するような大げさなイメージを抱いてしまいますが、そうではなくもっと単純に地表面に比べて温度が安定している地中と地表との温度差を利用して、ヒートポンプを使って冷房や暖房のための熱を取り出す仕組みでした。

夏の暖かい空気や冬の冷たい空気から熱を取り出すよりは理論的には明らかに効率は良いはずの地熱利用のヒートポンプですが日進月歩の市販のエアコンの効率の良さを凌ぐことはできず、実際に大きな費用をかけて地熱利用の空調を計画したものの、市販のヒートポンプエアコンに置き換えられててしまったものもありました。

また話がそれてしまいましたが、要するに夏の地下室の室温は地上の気温よりも何度か低いわけです。

土に接する部分の断熱性能をいかに上げても、扉で空気を閉じ込めても地上の暑くて湿度の高い空気はどうしても地下に流れ込んでしまうのです。その時何が起きるのか。

28度で相対湿度が80%の空気が突然25度に冷やされてしまうので、空気は水蒸気を持ちこたえきれずに、特に冷たいところでなくてもそこら中に結露水として現れてきてしまいます。これを空気結露と呼んでいますがその量がちょっと驚くような量なのです。

建築的に断熱性能を上げたりということではとても追いつかず、ここは機械やエネルギーに頼らず何とか建築的に解決したいところなのですが、解決策は除湿器に頼って湿度を下げるしか方法がありません。ですから地下の大きさにもよりますが、場合によっては何台もの除湿器を配置しておくことになります。

また家電として売られている最近の除湿器のメインの用途は室内干しをするときに洗濯ものを乾かす目的に特化されているものが多く、連続排水機能がついているものは多くはないのですが、三菱電機やアイリスオーヤマ等にその機能があるものがあるので、それを数台自動運転で連続排水し、その水をポンプで地上に持ち上げるというような計画が必須になります。そうすれば地下は夏涼しく冬暖かい外に音が漏れにくい快適な空間として利用できます。

K854-41119.jpg

*地下に設けたAVルーム

ドライエリアをうまく計画すれば、想像以上の自然光を取り入れることもできるし、ドライエリア付きの雨水処理のピットがある場合はエアコンや除湿器から発生するわずかな水もそこに捨てればよいのですが、それがない場合昔は非常に大きな問題でしたが、最近ではポータブルのポンプもありその問題も解決されています。

R0010950.JPG

*地下に設けたジャグジー

このように難しい問題も多い地下室ですが、湿度の管理や重力に逆らって水を排水しなければならないというどうしようもない問題をうまく解決できさえすれば、地下室はとても快適な空間として住宅に新たな可能性を生み出してくれるはずです。

各種お問い合わせ

東京デザインオフィスでは
家づくりのご相談をいつでも承っています。
最新の建築実例集もご用意しておりますので、
お気軽に下記連絡先からお問い合わせください。

フリーダイヤルでのお問い合わせ

0120-040-744

受付時間/9:00~18:00 定休日/火曜日・水曜日