へーベルハウス東京デザインオフィスのマツオです。
先日完成した賃貸マンションのエントランスホールには、荒川と営業担当の為田の提案で絵画が飾られています。毎日そこから出かけ、帰る家だからこそ、ウェルカムグリーンやアートで演出されている空間があると、気持ちがリフレッシュできていいですよね。
当初の提案は、既存の作品をセレクトするのではなく、この空間のために新作を描いてもらおう・・・という話だったはずなのですが、そこからなんだか盛り上がり、描きあがった作品を搬入するのではなく、数日かけて現地制作でいきましょう!ということになりました。
面白い!!!短期間ですが、ちょっとアーティスト・イン・レジデンスみたいじゃない?というか、これはもはや建築の一部分なのでは。(当初、現地制作というアイデアを聞いた時はウォールペイントで、ヘーベル版に直に描くのかと思いました・・・それも見てみたい気もしますが。)
お願いしたアーティストは田中紗樹さん。 https://www.sakitanaka.jp/
成城モデルに数多くの現代アートを入れていただいたCHIE SAIKI ART PROJECTSの西喜さんプロデュースです。
クローバーヴィラ荻窪、というマンション名のイメージや建築コンセプトを共有して、事前にスケッチと試作を重ねてもらいました。
現地には漆喰で仕上げた板を搬入。滑らかで、美しい仕上げの画面です。この画面の設置方法から、作品保護のアクリルケースまで、荒川自身が詳細を設計しています。
2月某日。光と風と緑を感じる素案を元に、制作スタート。
田中さんの作品は、明るくリズム感のある作風で、即興的な勢いや迫力を感じます。しかし、こうして実際に制作工程を拝見すると、感情や行為を重んじて偶然の効果を生かすような技法ではありませんでした。書を長く経験されているとのことで、余白が語る引き算の美意識と、色を積み重ねていく足し算の豊かな美しさの両方を併せ持つ、独自の技法で躍動感を求めていることがよくわかります。
作品の持つ生き生きとしたエネルギー、田中さんご本人からも同じ印象を受けました。とても素敵な方でした。
輝きのある発色を活かした、エネルギッシュなマチエールですが、見ているとリラックスする不思議。
田中さんも仰っていましたが、絵を「描く」というよりも、材料とその使い方を工夫して表現効果を求める過程は「作る」と呼ぶほうが相応しく思えます。
完成した空間に向き合って、アートを選ぶ。愛着のある作品を新しい住まいに引き継ぐ。いずれもアートと暮らす楽しさです。
さらに、もうひとつのアプローチとして、その建物や土地が持つストーリーを骨子にしたアートを添えることで、空間の質が高まり、住まいと人のつながりもより深まるのではないでしょうか。
TDO ART PROJECT、シリーズ化できたらいいなと思っています。