vol.3:照明のこと、インテリアのこと
(vol.1、vol.2から続く)
──北欧デザインで統一されたインテリアのなかでも、ルイス・ポールセンの照明が一際目を引きますね。
正浩さん:ルイス・ポールセンのことは、インテリアを担当してくださった赤堀さんに勧められて初めて知りました。ダイニングのペンダント照明(エニグマ)も、当初はまったく予定していなかったんです。
でも、ものは試しということで、一度ショールームに行って照明セミナーを受けたんです。そうしたら、ものすごく緻密な計算をもとにつくられていることが分かって、「照明ひとつでこんなにも雰囲気が変わるんだ」って、もうビックリしちゃって。
香苗さん:もともとはダイニングもリビングも「ダウンライトだけでいい」くらいに思っていたんです。でも、ショールームに行ったら、コロッと意見が変わって、その場で「これを家に入れよう」って(笑)。なので、もし実物を見てなかったら、たぶん天井の照明はダウンライトだけだったと思いますね。
──インテリアはどこまでオーダーされたのですか?
香苗さん:照明も家具も、全部いっしょにお願いしました。赤堀さんは私たちの好きなものをすごく理解してくれていて、もうほとんどがお任せでしたね。
キッチンのタイル選びのときも、ネットですごく気に入ったタイルを見つけたんですが、ちょっと変わった形だったので、提案しても却下されるだろうなと思っていたんです。そのことを誰にも言ってなかったのに、打ち合わせで赤堀さんが用意していたのが、まさに私が気になっていたタイル! それからは「もう、赤堀さんに一生ついていきます!」という感じでした(笑)。
これから家を建てる方へのアドバイス
──最後に、TDOで新築をご検討されている方へのアドバイスはありますか。
香苗さん:自分たちの家づくりを振り返って思うのは、「この空間は気持ちいいな」とか「この空間はちょっと落ち着かないな」とか、そういう自分たちの好みの空間を知っておくこと。そして、その好みを夫婦で共有しておくことでしょうか。
──おふたりはどのようにして、その感覚を共有していったのですか。
香苗さん:私たちの場合は、実際の住宅の内見ツアーに行ったことが大きかったと思います。主人といっしょに何軒かツアーをまわって「あの家の、あそこが良かったね」とか「あのリビングは気持ちよかったね」とか、ふたりで何度も感想をいいあっていました。
──図面や写真だけじゃなく、実際の空間を体感することは大切ですよね。内見ツアー以外にも、お友だちのおうちやモデルルームの見学でも、そういうことはできそうですね。
正浩さん:そう思います。私たちもいろんな空間を体験していくなかで、どこかの時期から「仕切りはあるんだけど、完全に仕切ってなくて、空間的につながっている」というイメージを共有していった気がします。
いろいろ見てまわって「こういう感じが自分たちは好きなんだ」みたいなものを、すこしずつストックしていくのがいいのかもしれませんね。
香苗さん:私たちの場合、家が完成するまでの期間も長かったですからね。感覚の共有という意味では、それがかえって良かったように思います。
プランの細かいところは、具体的にならないとイメージできないと思うので、まずは空間に入ってのファーストインスピレーションを大切にしてみてください。おうちの使い方も、人によって違うと思うので、自分の生活にあった気持ち良さ、心地よさみたいなものを探るところから、家づくりをはじめてみるといいのかもしれませんね。
デザイナー・荒川からのコメント
I邸の特徴は、機能や要望を積み上げていくというより、空間のおもしろさや気持ちよさを優先しているところだと思います。
真ん中に設置したエレベーターもそうですし、階段にかかる窓の取り方をみても、いわゆるnLDKという発想ではなく、空間が持つ気持ちよさを優先させています。つまり、それは「大人のための家」ともいえます。空間の自由度を高くして、家の使い方を自分たちで考えられる、そんな大人たちの暮らす家という印象がしますね。
ルイス・ポールセンの照明も空間にとてもいいアクセントを与えています。私がいうのもヘンですが、居住空間でのルイス・ポールセンの使用例として、ショールームにしてもいいくらいだと思いますよ(笑)。