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窓図鑑vol.3:窓から入る光には"2種類"ある

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窓図鑑

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前回は「光は3種類ある」という話でしたが、窓から取り入れる光には、それとは別に2つの種類があると、東京デザインオフィスの荒川はいいます。3回目となる「窓図鑑」は、窓から取り入れ光について、さらに深く解説していきます。

ポイントとなるのは、光とともに入ってくる"熱"。光の制御が、すなわち熱の制御になる...。そのことが分かっていないと「家や空間デザインの設計はできない」と荒川が語る、その理由とは?

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 荒川 圭史  あらかわ けいじ/東京生まれ
 1985年 東京理科大学工学部建築学科卒業
 1987年 同大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程終了
 1987年 旭化成工業㈱入社以来東京の城南エリアで邸別の設計業務に携わる
 「フレックスレジデンス成城モデル」によるグッドデザイン賞など受賞多数

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窓から入るのは「直射光」と「天空光」

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窓から入ってくる自然の光には、2つの種類があります。それが「直射光」と「天空光」です。字面だけですと、違いが分からないと思いますが、この2つはまったく異なる光なのです。

まず、直射光には方向性があり、物体に当たると、光とは反対の向きに影ができます。クッキリとした温かそうな光で、基本的には、南方向から入ってきます。窓から差し込む"直射日光"を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

家のなかに取りこむ光はこればかりではなく、空の光も相当入ってきます。この"空の光"が天空光です。天井に窓が開いて空が見えていれば、直射光は入ってこなくてもかなりの光が入って、部屋は明るくなります。天空光は方向性のない"拡散光"で、四方八方から光が降り注ぐような感覚ですね。影はなんとなくできますが、もわっと暗いとか、なんとなく明るい、という見え方になります。

基本的に、部屋の明るさは「昼光率」という数値で評価します。この数値で用いる光は天空光で、それがどれくらい入っているかを評価するもので、直射光は関係ないのです。従って、部屋の明るさの評価はもともと、南面の窓と北面の窓を区別することはなく、あくまでも天空光の量で評価しているのです。

「直射光」にはあって「天空光」にはないものとは?

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よく「北向きの窓は日当たりが悪い」というのは、日本の建物の北向きの窓からは、どの時間になっても"直射光が入らない"からです。

これを文面通りに覚えてしまっていると、北側に窓を開ける発想が出てこなくなってしまいます。「直射光は入らないが、天空光は入る」と、正しく理解しておく必要があるのです。北向きの窓は日当たりが悪いのではなく「暖かい窓を作ることができない」という話です。

どういうことかというと、窓から入ってくるもののうち、熱は光と対で入ってきます。ただし、直射光と天空光のうち、熱が入るのは直射光だけで、天空光は光だけが入ってきます。天空光だけが入る場所や向きであれば、ドーンと大きな窓を開けても、熱は入ってきません。建築的に"熱を制御する仕掛け"を考えなくても済むので、北側には、わりと無防備に窓を開けてしまっても大丈夫なのです。もちろん、隣家とのプライバシーの確保とは、また別の話ですが。

また、間取りを設計するときに、よく聞くのが「南側には、窓を付けないといけない」という話です。誰もが聞いたことがある話ですし、それが"常識"と捉えている人も少なくありません。というか、ほぼ100%の人が「北側に窓をとっても光が入らない」と思っていると言ってもいいくらいです。

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昔の日本家屋は、四方に軒が出ているので、何も考えなくても南向きの窓の上には庇がありました。

庇があれば、入射角が70度から80度くらいの、夏至の時期に降り注ぐ強い直射光は家のなかへ入れず、入射角が30度くらいの、冬のやわらかな直射光は部屋へ取り入れることができます。庇によって季節ごとに変わる日ざしを、ある程度コントロールできるわけです。一方、東向きや西向きの窓では、夏でも低い角度で強い直射光が入ってきますから、庇を付けても意味がありません。「西日が差し込んで暑い部屋」とは、そういうことです。

ところが、ヘーベルハウスが手がける家は、基本的に庇がありません。庇を付けずに、南面に大きな窓を付けてしまうと、室内は暑苦しくて大変なことになります。光を取り入れる方向は、南なのか北なのか、東なのか西なのか。そして、入ってくるのは直射光と天空光なのか...。つまり「光と熱とを、どう取りこむか」を最低限理解していないと、家や空間デザインの設計はできないと言っても過言ではないのです。

ヒアリングの場で伝え、共有する「窓の話」

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初めてお客様に会う前には、必ず現地を視察します。多くの人は「南に窓が開けば解決する」とか「北に窓を開けても明るくならない」と、勘違いしているものです。特に、直射光と天空光の違いは、話をすると目から鱗が落ちたような表情になります。「この場所に、人が住むのならば、ここから日ざしが入るから、こういう空間がここに作れる...」という家のイメージや説明のイメージはその視察のときに、ほぼできていますね。

ヒアリングというのは、文面通りに「聞き取る」ことだと思われがちですが、聞き取るだけではなく、デザイナーが「こうするのが、目的を達する手段です」という話を、お客様と共有する場だと思っています。そのやりとりのなかで、これまでしてきたような「窓の話」を、ちょっとでも分かってもらうように心がけています。


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